衛生の語源

感染症の予防の考え方の中に「衛生」という言葉があります。一般的には、手洗いや消毒などで「清潔にする」というイメージが強いのですが、その他にどんな意味や歴史があるのかをご紹介します。

衛生の語源・意味

「清潔にする」事以外にも「衛」には「守る」、「生」には生命の意味があるので、衛生には「生命を守る」、「健康を維持増進する」という意味もあります。

色々な意味があるんだ

衛生行政

幕末から明治にかけて活躍した医師、長与専斎(ながよせんさい)は、明治4年(1871年)に欧米に渡りドイツやオランダの医学を学び、衛生行政について見聞を深めました。 日本にも「国民の健康を守る行政組織が必要だ」と確信したことから、帰国後、内務省内部に「衛生局」を立ち上げました。
長与専斎は組織の名前を考える時に、中国の古典「荘子」に「衛生」という言葉には「生命を守る」という意味があると書かれていたことから、国民の健康を保護する行政組織の名にふさわしいと、「衛生」と言う言葉を選びました。

壮士からきているんだね

時代背景

感染症は命にかかわる脅威の病気として昔から恐れられてきました。東大寺の大仏造営のきっかけとなった奈良時代の天然痘大流行(735~737年)は「天平の疫病大流行」と言われ、100~150万人が感染により死亡したとされています。

幕末になって、感染症は目に見えないウイルスや細菌が原因であることが分かり、その予防法や治療法に関する知識が西洋から伝わってきました。明治維新後にこうした新しい技術や情報によって、衛生局は天然痘コレラなどの感染症の流行の予防に尽力することができました。

衛生局

もともと、「生命を守る」という意味の「衛生」という言葉からはじまり、その後、感染症の予防をするために「清潔にすること」ということに重きを置かれたことから、「衛生」のイメージが「清潔にすること」と強く結びついたように思われます。
実は、「命を守る」、「健康を維持する」、という意味もあるのだと、少し意識してみてはいかがでしょうか。

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