衛生仮説とは

日本は、明治維新後に国を挙げて衛生環境の啓蒙に力を入れた結果、以前に比べて感染症は激減しました。その一方で現代病とも言われるアレルギー疾患の数が入れ替わるように増えていきました。今回はその謎に迫る「衛生仮説」についてご紹介します。

衛生的な環境とは

衛生的な環境とは、「清潔さを保つなどし、病気を予防し、健康を守るのに適切な様子」のことを言います。

衛生仮説とは

1989年、英国のストラカン博士が提唱した概念です。
彼は、英国で生まれた新生児「約1万7,000人」を対象として、兄や姉のいる子供ほど、アレルギー疾患が少ないことに気づき、弟や妹の方が兄や姉から細菌感染する機会が多いからではないかと推測しました。

兄弟の数とアレルギーの重症度が反比例する

それに基づいて「乳幼児期に環境が衛生的ではない方が、アレルギー疾患の発症を低下させる」という仮説をたてました。
しかし、当時は免疫学が十分に進んでいなかったので、周囲から理解を得る事はできませんでした。

衛生的な環境の問題点

アレルギーの原因は、身体の外から体内に吸収した物質に対して自身の免疫が過剰に反応することだと解明されています。
研究者達は、どうして衛生的な環境が整っているのにも関わらず、アレルギーが増加しているのか?と考えました。そして「衛生仮説」を見直す人があらわれます。

「ゆき過ぎた衛生的な環境」では、微生物の数がとても少なくなってしまいます。そのため、乳幼児期に「ゆき過ぎた衛生的な環境」で育ってしまうと、微生物による免疫を鍛える機会が失われます。アレルギーの場合、免疫機能がもつ「外敵かどうか区別する能力」が鍛えられなかったのではないかという、推測が成り立ちます。

免疫を鍛えるんだ

そしてこれらの推測から、衛生的な環境が整ってきた現代において、アレルギーを持つ人が増えたことにつながるのではないかという、新たな衛生仮説が提唱されました。

衛生=除菌はもう古い?

感染症が多発していたような時代では、「衛生=菌やウイルスを全滅させる。」といった極端な考えた方でも良かったのかもしれません。しかし、現代の日本の都市部の衛生環境はヒトに有益な微生物すら生息できない清潔すぎるレベルになっていると言えます。

これからの時代の「衛生」とはヒトの生活を支える有益な微生物との共存も必要となるのではないでしょうか。

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