LPSはリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide)の略で、通常は「リポ多糖」と呼ばれます。
他にも「糖脂質」、「内毒素」、「エンドトキシン」とも呼ばれます。近年では健康を守ってくれる成分として大きな注目を集めており、実は光合成細菌ともつながりが深い物質でもあります。今回は「LPSの正体を追う」として、特に「内毒素」という呼び名が付いた頃の話を中心にご紹介します。
※【LPSについて】もご覧ください。
内毒素
LPSの発見された時期は古く、その頃は「内毒素」と呼ばれていました。
「内毒素」は19世紀に発見され、20世紀に入るとその正体を突き止めるべく、活発な研究活動が繰り広げられました。
化学物質としての内毒素
フランスの微生物研究の名門、パスツール研究所の「アンドレ・ボワバン」博士は、1933年に内毒素が「糖と脂肪の性質を併せ持つ糖脂質」であることを明らかにしました。
アメリカでは、国立がん研究所(NCI)の「マレー・シアー」博士が、1936年から1943年にかけてコーリーワクチンの中身を研究していました。そのワクチンに使われていた、「セルチア・マルセッセンス」という細菌から多糖類を抽出しました。その抽出物は「シアーの多糖類」と呼ばれました。
抽出精製方法の確立と構造解析の開始
その後、ドイツのマックスプランク研究所のオットー・ウェストファール博士の研究グループが1945年に内毒素の抽出精製に成功します。
さらに、内毒素の正体がリポ多糖(LPS)であることを突き止め、1957年にはLPSの脂肪の部分が免疫系に働くことを発見しました。
魅力的な成分LPS
その後、LPSが免疫系にさまざまな働きをもたらす魅力的な成分として、さまざまな研究がされていきます。
アメリカの微生物学者L. J. ベリー博士が、「LPSほど数多くの科学的研究に取り上げられる魅力的な成分は、そう多くはない」と語るくらい、研究者にはとても魅力的な成分となっています。
特に、昔から「がんは不治の病」として知られ、「何とかしたい」という思いがLPSに取り組む研究者たちの共通のものであったに違いありません。